高断熱住宅なら「待つ」という選択もありかもしれません
「2027年からエアコンが高くなるらしい」
最近、そんな話を聞くことが増えました。
いわゆる「エアコン2027年問題」です。
2027年4月から省エネ基準が引き上げられることで、今後はエアコンのラインナップや価格が変わる可能性があります。
では、本当に今のうちに買っておいた方が得なのでしょうか?
今回は、14畳用・4.0kWクラスのエアコンをモデルに、
「本体価格が3割高くなったら、電気代で元が取れるのか?」 を計算してみました。
さらに、UA値0.3・C値0.3程度(ゆとりの断熱等級6)の高断熱・高気密住宅ではどうなるのかも考えてみます。
先に結論を言うと、
一般的な住宅では、省エネ性能の高いエアコンが長期的に得になる可能性があります。
一方で、
高断熱住宅では「高性能エアコンを買う」より、「家に合った小さめのエアコンを選ぶ」方が重要になる可能性があります。
ここが今回、一番お伝えしたいポイントです。
そもそも「エアコン2027年問題」とは?
2027年4月から、家庭用エアコンの省エネ基準が引き上げられる予定です。
このため、今後発売されるエアコンについては、メーカー各社がより高い省エネ性能を実現する必要があります。
ただし、ここで注意したいのが、
「2027年4月になったら、省エネ基準を満たさないエアコンがすべて販売禁止になる」
というわけではないことです。
実際には、メーカー全体の出荷製品に関する省エネ性能の考え方があり、従来型の製品がすべて一斉に消えるという単純な仕組みではありません。
とはいえ、ダイキンなどメーカー各社が新基準への対応を進めていることから、今後は低価格帯の普及モデルを中心に、商品構成や価格が変化する可能性があります。
ダイキン自身も、2027年4月以降の購入について「今買うべき」「待つべき」と一律に判断するのではなく、本体価格と電気代を合わせた「トータルコスト」で考えることを勧めています。
つまり、2027年問題を考えるときに大切なのは、
「今買うか、2027年以降に買うか」だけではなく、「どのくらいの期間使う前提で考えるか」「どのような使い方をするか」まで含めて考えること
だと思います。
まずは「本体価格3割アップ」で計算してみる
今回は、あくまで比較のために、
- 現行モデル:APF 5.0
- 新しい省エネモデル:APF 6.6
と仮定します。
※実際の2027年基準対応機がすべてAPF6.6になるという意味ではありません。
また、本体価格についても、
現在16万円のエアコンが、3割高くなったら?
という条件で計算します。
すると、
16万円 → 20万8,000円 となり、本体価格の差は4万8,000円です。
電気代を同じ条件で比較すると、次のようになります。
| 現行モデル | 新しい省エネモデル | |
|---|---|---|
| APF | 5.0 | 6.6 |
| 本体価格 | 16万円 | 20万8,000円 |
| 年間電気代 | 約4万8,000円 | 約3万6,400円 |
| 年間の差額 | 約1万1,600円 |
この条件なら、
4万8,000円 ÷ 1万1,600円 ≒ 4.1年 となります。
つまり、
約4年で本体価格の差を電気代で回収できるという計算です。
10年間使ったらどうなる?
ダイキンでは、エアコンの設計上の標準使用期間を10年としています。

そこで、まず10年間使った場合を比較します。
現行モデル
本体16万円+電気代約4万8,000円 × 10年= 約64万円
新しい省エネモデル
本体20万8,000円+電気代約3万6,400円 × 10年= 約57万2,000円
結果は、
10年間で約6万8,000円、新しい省エネモデルの方が安い という試算になりました。
ただし、ここには大きな注意点があります。
この計算は、JISの標準条件をもとにしたカタログ上の消費電力量を基準にしています。
実際の電気代は単純にそうはなりません。
- エアコンを使う時間
- 設定温度
- 地域
- 住宅の断熱性能
- 日射条件
- 間取り
などによって大きく変わります。
では、(ゆとりの断熱等級6)高断熱・高気密住宅なら?

ここからが重要です。
例えば、UA値0.3 C値0.3 程度の高断熱・高気密住宅です。
このような住宅では、そもそも冷暖房負荷が小さくなります。
つまり、
エアコンの電気代そのものが安くなる のです。
そこで今回は、JISのエネルギー消費量算定で用いられる**断熱等級4相当の標準的な住宅モデル(いわゆる一般的な省エネ基準住宅)**と比較し、住宅の断熱性能が向上した場合の影響を踏まえて考えます。
そのうえで、断熱等級6〜7相当(UA値0.3前後)の住宅では、暖冷房負荷が一般的な省エネ基準住宅に比べて**おおむね30〜50%程度低減するという試算例(建築研究所・住宅性能評価の熱負荷計算モデル等)**が示されていることから、今回はその範囲を参考にしつつ、単純な一律削減ではなく「住宅性能によって大きく変動する」という前提で試算してみます。
すると、
| 現行モデル | 新しい省エネモデル | |
| 年間電気代 | 約2万4,000円 | 約1万8,200円 |
| 年間の差額 | 約5,800円 |
となります。
本体価格の差は4万8,000円なので、 4万8,000円 ÷ 5,800円 ≒ 8.3年 です。
一般的な住宅では約4年で元が取れたのに対し、高断熱住宅では約8年かかる計算です。
10年間使った場合でも、約5万8,000円の電気代削減なので、本体価格の差4万8,000円を引くと
約1万円の差しかありません。
ただし、この試算は使用時間・地域・日射条件・間取りなど多くの前提条件に基づいたものであり、実際には数万円単位で前後する可能性があります。
そのため、この差額はあくまで誤差の範囲に近く、高断熱・高気密住宅においては、
省エネ性能の高いエアコンに買い替えた場合でも、トータルコストの差はあまりないと言えます。
省エネ性能の高いエアコンに買い替えるメリットは、一般的な住宅ほど大きくないのです。
高断熱住宅で本当に考えるべきこと
高断熱住宅では、
「どのエアコンが一番省エネなのか?」よりも、「そもそも何kWのエアコンが必要なのか?」
を考える方が重要かもしれません。
例えば、UA値0.3程度の住宅なら、「14畳だから14畳用」「20畳のLDKだから20畳用」
と、畳数表示だけでエアコンを選ぶ必要はありません。
住宅の熱負荷をきちんと計算すると、より小さな能力のエアコンで対応できる可能性があります。
もちろん、
「14畳の部屋なら6畳用で十分」と単純に言えるわけではありません。
間取りや吹き抜け、窓、日射、地域によって必要な能力は変わります。
だからこそ、
高断熱住宅では、エアコンの畳数表示ではなく「住宅全体や各個室ごとの熱負荷をしっかり空調計算で算出し、それに基づいて空調計画を行うこと」
ことが大切です。
2027年問題、今すぐ買うべき?
今回の試算から考えると、私は、
「2027年問題だから、今すぐエアコンを買わなければ損」とは思いません。
一般的な住宅で長時間エアコンを使うなら、将来の省エネモデルの方が、長期的にはトータルコストで有利になる可能性があります。
一方、高断熱・高気密住宅では、エアコンの消費電力量そのものが少なくなるため、省エネ性能の差による電気代削減効果も小さくなります。
その場合は、
高価な高性能エアコンを選ぶより、必要な能力を正しく計算して、無駄に大きなエアコンを買わない
という考え方が重要なのです。


